解散方針が全会一致で決議されたことは朗報です。
次の課題は『解散時期の早期化』ですが、その根拠を以下で解説します。
1.「財政見通し計画」からの検証:
議案2.-1で、基金解散までの財政見通し計画が提示されています。
その内容を見ると、「毎年14億円の運用収益を上げているにもかかわらず、
上乗せ資産は 毎年7億円しか増加しない」ことが分かります。
その原因は、基礎収支(掛金等収入と給付等支出の収支)が毎年▲17億円
もの大赤字だからです。さらに、その基礎収支赤字の中身をよく見てみると、
代行部分は掛金収入17億円、年金給付39億円で差引き▲22億円の赤字、
上乗せ部分は掛金収入13億円、年金給付5億円で差引き8億円の黒字
であることが分かります。(H27年度決算より)
つまり「代行部分が大赤字であるために、上乗せ掛金をつぎ込んでも、運用で
稼いでも、年金資産がなかなか増えない」という構図が分かります。
そこで、仮にもう一年早く、H29/3月で解散して、全事業所が後継制度に移行
した場合をシミュレーションしてみました。
H29/3の年金資産430億円のうち391億円を国に返還し、上乗せ資産39億円が
後継制度の資産となります。上乗せ分の掛金(13億円)と給付(5億円)は現行
のままと仮定し、運用収益ゼロとして計算すると下表のようになりました。
≪早期解散(H29/3)の場合の年金資産シミュレーション≫
元の財政見通し計画と比べると、H30/3時点の資産額は46億円→47億円に、
H31/3時点の資産額は53億円→55億円、に増加することが分かります。
不確実性が伴う資産運用に頼らなくても(運用収益がゼロでも)、代行部分を
国に早く返上することで”確実に”資産額が増加するということは、後継制度に
移行するしないに関わらず、加入員、受給権者の全員にとってプラスです。
つまり、1年でも早い解散は関係者全員にとって有利と言えます。
2.「不確実性(運用リスク)の排除」:
いったん基金解散の方針を決めたからには、できるだけ迅速に解散準備をとり
進めると同時に、年金資産の”確保”に努めることは鉄則です。
そこで、資産確保の一つの方法として、「年金資産の前納」があります。
国に返還する代行部分の資産については、国の年金資産の運用を行っている
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用利回りに負けなければよい、
とされています。つまり国の運用利回りと基金の運用利回りが同じであれば、
代行資産額の増減が同じなので、基金の追加負担にはならない、ということです。
そんなことならば、代行資産額の一部でもを先に返してしまえば(解散認可の前に
納めるので「前納」と言います)、その分の運用リスクは全くなくなるから、基金に
とっても安心だ、ということで解散した多くの基金では前納をしています。
解散が決まった以上は、運用リスクを排除することが効果的です。
なお、現実には、当基金はH27年度の代行部分の運用利回りは国に負けています。
また、今年度の足元の運用利回りも負けているようです。
基金の常務理事は、運用責任者としての”運用執行理事”を務めてもらっていますが、
解散方針を決定した以上は、資産確保の観点からの運用リスク排除という発想転換
が必要になるでしょう。
ちなみに、当基金の兄弟分に相当する「東京金属事業厚生年金基金」は、来年3月の
解散に向けて解散業務を取り進めていますが、再び『代行割れ』に転落する公算大、
という状況に陥ってしまいました。同基金のホームページにも公開されています。
http://www.tokyokinzoku-pf.or.jp/kaisan_kankei.php
通常解散で代行割れの場合、代行不足額を事業主が一括拠出すること、連帯債務が
伴う、となるので、同意書取得では紛糾する懸念があります。
もって他山の石、とすべきではないでしょうか。
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